厄介な性癖

日帰りで予約したビジネスホテルにチェックイン。部屋に入って、まずはお風呂のお湯を貯める。

医療脱毛に通ったおかげで、体毛はかなり減った。
でも、シェービングという行為が好き。ふだんの生活で垢のようにまとわりついた男らしさを落としていくような気持ちになるから。使うジェル、シェーバーはもちろん女性用。
お風呂から上がり、ボディクリームでしっかり保湿をする。爽やかで甘い匂いが肌を包みこんでくれる。

ポーチから化粧品を取り出し、テーブルの上に並べる。

コスメは華やかな世界へのパスポート。
倒錯のバカンスへと連れってくれる。

メイクを終えたら、下着を身につける。
平らな薄い胸を包むブラジャー。少し先がはみ出てしまうパンティー。男の下着といえば下に一つだけ。でも、今は上下に分かれている。この感触がたまらなく好き。

前はピンクや赤といった派手な色の下着を選んでいたけど、今は落ち着いた色も買うようになった。

私のセルフプレジャーグッズ。

これだけ揃えるお金を風俗に使えば性欲はサクッと解消できる。
もっといえば、今まで女装に注ぎ込んだお金や労力を女性と付き合うことに向けていれば、彼女くらいできていたかも。私は別にゲイってわけじゃないから、女性に対して興味はなくはない。

街で美しい女性を見かければつい目で追いかけてしまうし、職場の女性を可愛いなと思ってしまうこともある。

あの柔らかな肌、曲線を描く身体、愛らしい顔立ち。胸の膨らみに触れてみたいし、味わってみたい。
そして、挿入への淡い思いも持っている。

でも、それ以上に昂ぶるのは女性から「男」として見られなくなること。普通の男ならば嫌がるだろうが、なぜか私はそこに異様な性的興奮を覚えてしまう。女の子から「あなたゲイなんだよね」と言われれば、喜んで首を縦に振るだろう。

一体どうしてこうなったのか自分でもよく分からない。

他者からの視線でいうならば、男性から「女」として見られることも好きだ。
本当の女の子みたいに扱いされるのも嬉しいし、一時の代替え品として使われるのも楽しい。

好みの人に「俺のオンナになれ」と言われれば、何の抵抗もなく頷くだろう。

心の奥底には、女性とセックスしたいという願望がある。
でも、私は三十を越えても未だに童貞で咥えられたことも挿れたこともないのに、咥えた数や挿れられた数はどんどん増えている。
そのことに妙な誇りを感じるくらいに、私の性癖は厄介なのです。

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