
もともと私は女装で外出するのが苦手でした。
女じゃないとバレるのが怖くて、目立たないようにコソコソと歩いていました。

でも、最近は開き直りました。
無い袖は触れない。四角いモノを丸く見せることはできない。
だからバレても良い。っていうかバレて当たり前。
むしろ女装ですが何か?くらいの気持ちになったのです。

顔を上げて堂々と歩いてみると、すれ違う人の大半はスルーしています。
中には驚いた顔をしたり、じっと見てくる人もいますけど別に私の人生にとってはどうでもいい人たちです。
どうしてこんな風になったかというと、男性に抱かれたからだと思うのです。
例えば、とあるハッテン場。

女装して一歩入れば、男たちにつま先から頭のてっぺんまで値踏みをするように見られます。
普段の生活では絶対に向けられることのない性的な視線です。
「オネエサン、ちょっとお話しませんか?」
オネエサンという響きがなんだかこそばゆい。
少し会話をして、相性が良さそうなら部屋に行きます。

「ほんとうの女の子みたいだ」
一時の昂りから出た言葉と分かっていながらも、女の子みたいと言われるのはやっぱり嬉しい。
唇を塞がれ舌をねじ込まれ、力強く抱きしめられる。
その強引さにオスを感じ、背徳的な幸せに包まれます。
「スケベな身体してるなぁ。たまんねえ」
「B面のときも犯してやりたくなってくる」
ギンギンに硬くなった彼の下半身が私がオンナになれている証拠。
あくまで密室の中だけかもしれないけど、差し込まれる温度に嘘ないと思う。
見つめ合ったり、見上げたり、あるいは目隠しされたり。
ベッドの上で男女の関係を結び、やがて解ける時間へ。
ドクドクと脈打つ竿、汗ばんだ硬い肌、満足そうなため息。
自分の中で男性が果てた。
本来は女性しか知らないはずの感覚。それを味わっていることに罪悪感を覚えながらも、淫靡な達成感が込み上げてきます。
ゴムに溜まった白濁液を見ると、妊娠っていう二文字が頭に浮かびます。
そんなことないと理性でわかっている。だけど、本能のある部分がたしかにそう訴えるのです。
ありもしない子宮を下腹部に感じながら、男性の腕の中で情事の余韻に浸ります。


と、こんなことを繰り返していくうちに、女装外出への抵抗感がなくなっていきました。
見ず知らずの人間にオカマって見られてもいい。
だってそれを喜んでくれる男の人たちがいるんだから。
と、極めて特殊な方法で私は♂オンナとしての自信を身につけることができました。